ミニケストラ

ドラゴンボール主題歌作曲者に池毅さんが語る曲つくりの楽しさ

新企画「ミニケストラと広げる曲つくりの素晴らしさ」

ミニケストラがクラシックカバーさせていただいている楽曲の作曲者にインタビューを行い、曲作りの素晴らしさを世の中に伝えていく新企画です。

 

記念すべき第一回はドラゴンボールの初代主題歌「魔訶不思議アドベンチャー!」の作曲者である池毅(いけたけし)さんです!

 

池毅(いけたけし)さんのプロフィール

今までに2000曲以上の曲を生み出してきた作曲家の池毅さん。

1979年He-Story(ヒストリー)メンバーとして東芝EMIから「結婚します」でデビュー。

 

解散後は作曲家として、CMからアニメなど様々なジャンルの曲を作りあげました。

代表作の1つは、ミニケストラでもアレンジさせていただいているドラゴンボール・初代主題歌魔訶不思議アドベンチャー!です。

同じくドラゴンボールのエンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」も池毅さんが作曲しました。

 

そのほかにも、数多くの有名曲を輩出しています。

  • ドラゴンボールZ・主題歌「でてこいとびきりZENKAIパワー!」「僕達は天使だった」
  • おジャ魔女どれみ・主題歌「おジャ魔女カーニバル!!」
  • NHK「ひとりでできるもん!」シリーズ通算13年、全楽曲担当(延べ800曲)
  • 魔神英雄伝ワタル・エンドテーマ「a・chi-a・chiアドベンチャー」
  • ママレードボーイ・エンドテーマ「素敵な小夜曲」/劇中歌「MOMENT」他
  • その他多数

誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 

そんな池毅さんが考える「作曲家」について迫っていきます。

 

作曲家とは自ら名乗るもの

早速ですが、なぜ池毅さん(後、池さん)は作曲家になろうと思ったのでしょうか?作曲家になったいきさつを教えてください。

 

池さん:グループ時代に作っていた曲がフォークというジャンルに収まらなかったからです。ライブでは同じメニューになりがちで限界を感じていました。どんどん新しい楽曲を作っていく方が性に合っていたんだと思います。いわゆる作曲家になったのは、言うまでもなくパフォーマンスをするより曲を作ることが好きだったからです。そもそも作曲家って証明書も資格試験もないですよね。仕事を通して作曲活動を続けて実績を上げてから、自ら「作曲家」と名乗るものだと思っています。

 

ー たしかに資格とかないですものね。でも、そうなると誰でも作曲家になれてしまうのではないでしょうか?

 

池さん:そうですね、今も昔もですが作曲家になろうと思えば誰でもなれると思っています。最近だと音の打ち込みとか、メロディやフレーズの切り貼りとかも簡単にできるので質を問わなければ誰でも作曲家を名乗れる時代です。世間に認知されるかどうかは別ですよ。だから、かえってこの時代に作曲家になるのは僕の時代よりも競争率が高いのではないでしょうか。

 

ー Youtuberとかもどんどん出てきて、そこからメジャーデビューとかもありますものね。

 

池さん:本当にそうなのですよ。この流れは世界的に起こっていて、非常に変化のスピードが速いと感じています。作曲家はいつまでも自己流ではなくて、時代に合わせて変化していくことが大事だと考えています。自分自身も、時代の変化に合わせていくことを心がけています。

 

どうしてそんなに幅広いジャンルの曲を作れるの?

ー 池毅さんはCMからアニメ、さらにはNHK教育テレビ番組の曲まで手がけていますが、どのようにして幅広いジャンルの作曲スキルを習得したのですか?

 

池さん:仕事をこなしながら作曲のスキルを習得していきました。「自分でこのジャンルをやりたい!」というより、依頼される案件に沿って試行錯誤の勉強を通して作曲を行なっていたら結果的に様々な制作者から依頼を頂くようになり色々なジャンルの曲を作れるようになっていった、という感じです(笑)

 

ー 自分からいろんなジャンルに手を出していたわけじゃないのですね。

 

池さん:そうですね。作曲を依頼する方は、なんでも作曲者(僕)ができると思っているんですよ。「こういう曲をやりたいんだけど、できる?」って言われて「出来ます!」ってまずは答えてから、さてどうしようって曲を作ることがほとんどです(笑)

 

ー どんな感じで依頼が来るのですか?

 

池さん:CM音楽の場合は制作者から「こういう世界観でやってくれ」とサンプル曲をもらうケースがあります。サンプル曲はあらかじめクライアントにプレゼンされていて既にイメージは承認済み。その曲を自分の中で分析しながら新たな曲を作っていきます。CM音楽の制作は貪欲で、僕にとっては学びながら曲を世の中に送り出せる、という美味しい仕事です。(笑)

 

様々なジャンルの作曲依頼が来ると、さすがにつらいな…って思うことはないのでしょうか?

 

池さん:確かになかなかメロディが降りてこないこともあります。仕事という観点で考えると、作曲を依頼してくれた人のイメージから大きく外れなければ最低ライン合格にはなるのですよね。しかしそこに甘えてはだめで、打ち合わせで絞り込んだイメージを念頭に、与えられた時間で出来る限りクオリティを上げていきます。つらいと思ったことはあまりありませんが、その都度勉強になるので作曲の仕事は楽しい面白いって思っています。

 

ー なんでも勉強と思うことって大切ですよね。各分野において一点突破するのも大事だと言われていますが、そうやってジャンル問わずどんどん作曲を行なっている池さんにとってこのことはどう思われますか?

 

池さん:一点突破も大事だと思いますが、やはりいろいろ自分の可能性を試さなければどのジャンルで突破できるかわからないと思うのですよね。私もいろいろと作曲活動を行なっていくうちに自分らしいメロディ展開を見つけることができて、後にお世辞でしょうが「池メロだね」と言われるようになりました。音楽のジャンルがボーダレスになっているんですよ。だから自分から間口を狭めて一点突破しなくてもいいのではないでしょうか。

 

魔訶不思議アドベンチャー!について

ー ミニケストラでもアレンジさせていただいている「魔訶不思議アドベンチャー!」ですが、この曲の作曲秘話みたいなものがあれば教えていただいてもよろしいでしょうか?

 

池さん:実は、ドラゴンボールがジャンプに掲載されていたのは知ってはいたのですが、しっかり読んだことはなかったんです。だからあまりストーリーを知らなかったんです。でも、知らないからこそ、固定概念にとらわれることなく頂いた歌詞から冒険感とかワクワク感がでるようなメロディが書けたんだと思います。
作曲オーディションということで、既にエンドテーマの「ロマンティックあげるよ」を書き終えていたこともあり、あまりプレッシャーを感じないで作曲にとりかかって2日くらいで一気に仕上げたんです。
結果、オープニング、エンディング、両方採用と云う事になって・・。
「魔訶不思議アドベンチャー!」のサビ終わりの「アドベンチャー!」のメロディは動画会社のプロデューサーさんからリクエストがあって数パターン考えましたが、結局最初のメロディーに落ち着きました。
勢いのあるマイナーサビからAメロA’メロ、Bメロの「Let’s Fly Fly Fly魔訶不思議 ・・・」で一気にメジャーに展開して金斗雲での飛翔感を出し再びサビへ突入、というドラマチックな構成も良かったと思います。自画自賛ですが。

 

 

ー そうだったんですね。「魔訶不思議アドベンチャー!」の曲を聴いていると、「パン」っといったようなキメのリズムが多いですが、それは何か理由があるのでしょうか?

池さん:「つかもうぜ! ドラゴンボール」の間の休符の事ですね?聴き手がついつい合いの手かけ声を入れたくような隙間。このように余白を作っておくことで、聴いている人は自然に掛け声を出したくなってしまうんです。ワクワク感を一緒に感じてもらって、曲にノリやすくなるように作りました。

 

ミニケストラの魔訶不思議アドベンチャー!のアレンジについて

(真剣に聞くあさみ先生小田原さん)

ー ミニケストラはこの「魔訶不思議アドベンチャー」をアレンジさせていただいたわけですが、恐縮ですが実際に聴いていかがでしたか?

池さん:本人を前になかなかいうのは難しいですね(笑)でも、ミニケストラはドラムやパーカッションなどリズム楽器がない編成の中で、うまくアレンジしたのはすごいなと思いました。

 

ー 嬉しいです。具体的にどのような部分でしょうか?

池さん:例えば、チェロとフルートがキメの部分をジャンっと決まっているように作っていますよね?そして曲の中にもわびさびがしっかりあってすごいなと思います。広がりもありつつ、タイトな部分はタイト。世界観を崩さずアレンジしてくれて嬉しいです。

 

ー ありがとうございます。恐縮です。

 

作曲家は言われてなれるもんじゃない

ー Youtubeとかでデビューして人気になることで、作曲家になった方がいいよという風潮もできてくるかと思いますが、それについてはどう思われますか?

池さん:作曲家というものは習えば誰でも全員プロになるわけじゃないのですよね。誰かからレールを引いてもらって、作曲家になれるものじゃないのですよ。メロディをゼロから「生み出す」ってことはちょっとした才能・センスが必要だと思っています。

 

ー 作曲のノウハウを学ぶだけじゃダメってことですよね?

池さん:そうですね。ノウハウを学んだだけで作曲家になれたら今頃作曲家で溢れてまいます。でも実際そうなっていない。

 

作曲を続けていく上で学んだこと

ー 池さんはもう作曲家をもう40年近く続けてきたわけですが、その中で学んだことなどはありますでしょうか?

池さん:それはもうたくさんあります。中でも大事なことは「集中力」だと思っています。仕事って一期一会じゃないですか。曲を仕上げて世に出して評価を受けて、それが自分の実績になっていきますよね。曲を作るまでにどれだけ努力したかというプロセスは依頼者にも聴き手にもありません。仕事である以上締め切りというものがあります。与えられた時間の中で曲に向き合って集中力をどのくらいその曲につぎ込めるかが大事だと思います。そうすることが依頼者への礼儀だと思います

 

ー たしかに短い期間で集中して作り上げることは大事になってきますよね。趣味とはちがいます。

池さん:そうですね。集中力がない人は作曲家として曲を作り続けるのは難しいかもしれません。

 

 

ー 他にも学んだことがあれば教えてください。

池さん:集中力と同じくらい大事なのが、数をこなすことだと思います。今までの作曲したのはCD化されている曲だけで2,200曲くらい。作曲家で食べ続けるためには作り続けて行くことが大事になってくると思います。そして、仕事として納期がある中、全力で集中して取り組むことです。頼まれて曲を書くのと、自分の趣味で曲を書くのとでは全く違います。責任が生じる、つまり制作費を負担しても貰える楽曲をどれだけ任されるのかがプロの作曲家としての信頼度に関わってくると考えています。

 

ー 曲数を多くするには必然と仕事も取ってこないといけなくなりますが、そもそも仕事を取ってくること自体も大変ではないでしょうか?

池さん:作家マネージメントの事務所に所属するのも1つの方法です。そして良い制作者と出会って良い作品を生み出していく。そういうチャンスを逃さない人が作曲家として成功していくんだと思います。仕事が仕事を呼ぶサイクルに乗れたらしめたものです。でも、どれだけすごい能力や才能があっても人や仕事への対応が悪かったら、その人は消えていきます。したたかさと誠実さ謙虚さのバランスが大事だと思います。

 

作曲家になりたいと思っている人にメッセージを

ー 最後になりますが、これから作曲家になりたいと思っている人にメッセージをよろしくお願いします。

池さん:音楽は「音楽を楽しむ人」と「音楽を作る人」の2つのタイプに分かれます。例えば、世の中に100人の人間がいるとすると、99人は音楽を鑑賞する側の人間です。作曲家として作り出す側0.1%の1人というポジションに立つことは決して容易ではありません。世の中に印象を与えるようなメロディに出会い、その出会ったメロディをいかに曲として表現できるか。メロディを見つけて表現するというプロセスの効率がいい人が作曲家になるんでしょうね。だれもが鼻歌で曲を生み出すことができると思うのですが、そのメロディを自分のセンスを駆使して逃さずに曲に落とし込む。そしてその曲を良いシチュエーションで発表できる人が作曲家としてやっていける人なのです。もちろん才能・センスというものもありますが、人脈と作品とタイミングという、この3つの要素が揃って、曲を作り続ける人こそが作曲家として成功していくのではないかなと思っています。

 

ー 作曲家になることへの大事なことを教えていただきありがとうございます。結構大変ですが…笑

池さん:でもまずは曲を作ることを楽しんでほしいです。音楽は「音を楽しむ」って書きますからね。今の時代はYoutube、Twitter、Instagramを使って誰もが世界に向けて曲を発信できるようになりました。何が世界にウケるかはわかりません。だから考える前に、まずは発信してみることが大事なのかもしれません。どんな作曲家がこれから出てくるのか、とても楽しみにしています。

 

池毅さんありがとうございました

これまで40年間に渡って2,000曲以上も生み出してきた池毅さん。

 

圧倒的数と継続力で、今でも多くの人が池毅さんの曲を聴き続けています。

今回のインタビューで池毅さんとお話をして、ミニケストラのピアノ&アレンジを担当しているあさみ先生もかなり熱が入りました。

 

ぜひ、音楽を聴くだけでなく生み出す側の立場に立ちたいなと思っている人は、池毅さんの言葉をしっかりと心に残しておくことをおすすめします。

 

池さん、お忙しい中に素敵なお話をありがとうございました!

 

 

ミニケストラの創業者小田原さんへのインタビューも大変面白いので、ぜひご覧ください。

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