コラム

音楽は薬であり救いである。ロバート・グプタ「音楽に救われた魂」(Music is medicine, music is sanity)

みなさんは「路上のソリスト」という映画をご存知でしょうか?

この作品は、記者スティーヴ・ロペスがホームレスの音楽家ナサニエル・エアーズとの交流を綴った連載コラムを映像化した作品です

そして、このナサニエルと出会い感銘を受けたバイオリニストがいます

 

それは、アメリカのオーケストラ・ロサンゼルスのバイオリニストであるロバート・グプタです

ロバート・グプタが統合失調症の音楽家・ナサニエルにレッスンをした時の思い出や、そこから気がついた音楽の本質について語ったものがTEDで配信されているので、今回はその内容をご紹介いたします

音楽が繋ぐスティーブとナサニエルの物語『路上のソリスト』

「路上のソロリスト」はLAタイムズのコラムニストであるスティーブ・ロペスと統合失調症のナサニエルが音楽によって繋がっていく物語です

もともと「路上のソロリスト」は紙の媒体で連載されていました

その後、スティーブのコラムは映画化され、多くの人に知れ渡ることになったのです

そこではロバート・ダウニーJr.がスティーブ役、ジェイミー・フォックスがナサニエル・エアーズ役を演じています

 

ロペスがロサンゼルスのダウンタウンを歩いていると、美しい音楽を耳にします

その音の主が、ナサニエルだったのです

彼は当時、アフリカ系アメリカ人の感じの良い無骨なホームレスで、弦が2本しかないバイオリンを弾いていました

 

ジュリアード音楽院に通うコントラバス奏者だったナサニエルでしたが、妄想型統合失調症という悲劇的な病気のせいで未来が断たれてしまいます

音楽院を退学し転落してしまったナサニエルは30年後、ロスのスキッドロウ地区でホームレスとして暮らしていました

そんな地に堕ちるようなナサニエルの生活が、スティーブと出会ったことで、絆が生まれ音楽によって路上の生活から救い出すことになったのです

その後の展開は、ぜひ「路上のソロリスト」をご覧ください

ロバート・グプタとナサニエルの出会い

今回登壇しているロバート・グプタが、そんながナサニエルに出会ったのは、2年前のウォルトディズニーホールでした

ナサニエルはホールでロバートが演奏したベートーベンの交響曲の1番と4番を聞いた後、舞台裏にやって来て、とても生き生きと社交的に話したそうです

 

その数日後、ロバートのところにはスティーブからナサニエルがバイオリンレッスンを受けたがっているとのメールを貰い、彼のレッスンをすることになりました

その時、ナサニエルは治療を拒んでいました

というのも、以前彼が受けた治療はショック療法とソラジン(抗精神病薬)と手錠を使うもので、彼はその時の傷をずっと引きずっていたからです

そのせいで彼はたびたび統合失調症の発作を起こしていました

ひどい時には、感情を爆発させて何日も姿を消たり、スキッドロウの通りをさまよい歩いたり…

ナサニエルは絶えず恐怖に苛まれ、その苦痛は堪え難いものだと、ロバートは語ります

ナサニエルのレッスン

私たちがディズニーホールで最初のレッスンを始めた時、ナサニエルは躁病による興奮状態で、目は不自然に光り、心を失っていました

そして、彼は見えない悪魔や煙の話、眠っている間に毒を盛られたという話までしていたのだそうです

そんなナサニエルをみて、ロバートは彼を失ってしまうかもしれないという恐怖に駆られました

もしロバートがそこで音階やアルペジオみたいなものを説教くさく教えたら、きっと彼のバイオリンとの関係を壊してしまう

そう思い、すぐにベートーベンのバイオリン協奏曲の第1楽章を弾きました

音楽によるナサニエルの変化


引用:「路上のソリスト」より
ロバートはバイオリンを弾きながら、ナサニエルの目に変化が現れるのを感じました

演奏した音楽がきっかけとなって、何か目に見えないー薬のような化学反応が起きたかのようにナサニエルは変わっていきました

音を聞いたナサニエルの感情は、怒りから落ち着いた興味と気品に変わったのです

 

自分のバイオリンを手に取ったナサニエルは、メンデルスゾーンやチャイコフスキー、シベリウスなど、聞き覚えているバイオリン協奏曲の断片を弾き始め、ロバートに直してくれるように頼みました

ナサニエルは幅広い音楽の知識を持つばかりではなく、情熱と理解をもって音楽を語りはじめたのです

そして一緒に音楽を奏で、音楽について語り合ううちにナサニエルはどんどん変わっていきます

音楽によって、ロスのダウンタウンの路上からやってきたばかりの偏執的な精神障害者から、ジュリアードの教育を受けたにふさわしい、魅力的で博識な素晴らしい音楽家へと変わっていったのです

音楽は薬であり、救いである

路上のソリスト

ナサニエルにとって音楽は心を取り戻してくれる薬です

音楽はナサニエルの思考と妄想を、想像力と創造性を通じて現実の形にし、苦痛から解放してくれます

ロバートはこれこそが芸術の本質で、私たちが音楽を作る理由だといいます

芸術は、感情を取り出し、芸術というレンズ、クリエイティビティを通して、その感情を現実のものへと形づくります

そして表現の本質が私たちに伝わり、感動させ、刺激し、私たちを1つにします

 

さらに、ナサニエルにとって音楽は友達の元へと引き戻してくれるものでもありました

音楽の力が、彼を理解し、才能を認め、敬意を払ってくれる音楽家仲間の元へと彼を連れ戻したのです

音楽は私たちを変えます

音楽で変わる体験をしてほしい


引用:銀座SORAより

今回は、ロバートとナサニエルの出会いから変化までをつづりました

音楽の力は偉大なものだと、ロバートの話を聞いて改めて気づくことができたのではないでしょうか?

 

出会ったナサニエルの人生は路上のソリストの映画の中で描かれています

気になった方はぜひご覧になってみてください

 

そして、ミニケストラも同じように、生演奏を聴くことで心の変化が生まれるきっかけづくりの場を、日本中に広めるために活動をしています

コンサート会場にかかわらず、幼稚園から大使館パン屋さんまで

みなさんが変われるような場を提供ていきたいと思っています

 

今回「音楽に救われた魂」の講演は以下のTED公式ページから日本語字幕付きで全文が閲覧できます

ぜひ、ご覧ください